作ったルールを忘れないために:家族みんなで意識するSNSルールの共有術
お子さんのSNS利用が始まるにあたり、ご家庭でルール作りを検討したり、すでに取り組んだりしている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ルール作りは、お子さんの安全を守るために非常に大切な第一歩です。しかし、「せっかくルールを作っても、本当に守ってもらえるか不安」「作ったルールをどうすれば家族みんなが意識できるのか分からない」といったお悩みを聞くことも多くあります。
ルールは作って終わりではなく、それを家族みんなで共有し、日常の中で自然と意識できるようにすることが大切です。この意識づけが、ルールを形だけのものにせず、ご家庭にとって意味のあるものにするための鍵となります。
この記事では、ご家庭で作ったSNS利用ルールを、難しく考えずに家族みんなで共有し、日々の生活の中で意識するための具体的な方法をご紹介します。
なぜルールの「共有」と「意識」が大切なのか
ご家庭でSNS利用ルールを作るプロセスは、お子さんとインターネットの使い方や危険性について話し合う貴重な機会です。この話し合いを通して、お子さん自身も「自分ごと」としてルールの必要性を理解し、納得しやすくなります。
しかし、話し合いで決めたルールも、しばらくすると忘れてしまったり、意識から離れてしまったりすることはよくあります。これは、お子さんに限らず、大人でも新しい習慣を身につけるときなどに起こり得ることです。
ルールを「共有」し、日常の中で「意識」できるようにする工夫は、この「忘れてしまう」「意識から離れる」ことを防ぎます。家族みんながいつでもルールを確認できる状態にし、折に触れてルールについて話す機会を持つことで、ルールがご家庭の生活の中に根付いていきます。
ルールがご家庭に根付くことで、お子さんは迷ったときに自分でルールに立ち返って考えられるようになります。また、保護者の方も、ルールを破ったときに頭ごなしに叱るのではなく、「ルールではこう決めたよね」と落ち着いて声かけをしやすくなります。
作ったルールを家族みんなで共有する簡単なステップ
ここでは、ITに詳しくない方でもすぐに実践できる、具体的な共有方法をステップ形式でご紹介します。
ステップ1:ルールを「見える化」する
まず、決めたルールをいつでも見られる形にします。難しい操作は必要ありません。
- 紙に書き出す: 大きめの紙やノートに、家族みんなで話し合って決めたルールを書き出します。お子さんに書いてもらうのも良い方法です。文字は大きめに、分かりやすい言葉で書きましょう。
- パソコンで打ち出す(できる場合): もしパソコンで文字入力ができるようでしたら、入力して印刷するのも良いでしょう。文字のサイズを変えたり、箇条書きにしたりすると見やすくなります。難しい設定などは不要です。
- 絵やイラストで表現する(お子さんと一緒に): ルールの内容を簡単な絵や記号で表現してみるのも効果的です。例えば、「夜9時になったらスマホはおしまい」なら、時計の絵とスマートフォンの絵を組み合わせてみたり。「知らない人には本名や学校名を教えない」なら、顔の絵にバツ印をつけたり。視覚的に分かりやすくなり、特に小さなお子さんには伝わりやすくなります。
ご家庭で一番取り組みやすい方法を選んでください。大切なのは、決めた内容が、誰でもすぐに見て理解できる形になっていることです。
ステップ2:家族みんなが「必ず目にする場所」に置く、貼る
次に、作ったルールを「見える化」したものを、家族みんなが日常的に目にするところに置いたり、貼ったりします。
- リビングの壁や柱: 家族が集まるリビングの、みんなの視線が集まりやすい壁や柱に貼ります。ポスターのように、自然と目に入るようにします。
- 冷蔵庫のドア: キッチンに立つ人だけでなく、飲み物を取りに来る際など、家族が必ず開ける冷蔵庫のドアにマグネットで貼るのも良い場所です。
- ダイニングテーブルの近く: 食事の際に自然と視界に入る位置に置いたり貼ったりします。
- 子供部屋の目立つ場所: お子さん自身の意識を高めるために、子供部屋の机の正面や壁など、よく目にする場所に貼るのも効果的です。
どこに置くか、貼るかは、ご家庭の生活スタイルに合わせて、家族みんなで話し合って決めるのがおすすめです。「ここに貼っておけば、いつでも見られるね」と、お子さんと一緒に場所を決めることで、より「自分たちのルール」という意識が芽生えます。
ステップ3:折に触れて「ルールを確認する時間」を作る
ルールを貼っただけでは、時間と共に意識が薄れてしまうことがあります。そこで、意識的にルールを見直す機会を設けることが大切です。
- 週末などに家族で軽く読み返す: 毎週日曜日の夜など、家族が比較的リラックスしている時間に、「そういえば、うちのSNSルールってどんなだっけ?」と、みんなで声に出して読み返してみます。長い時間をかける必要はありません。
- 食事中などの日常会話で触れる: 食事中に、「今日学校でSNSの話になったんだけど、うちのルールだとこういう時はどうするんだっけ?」のように、何気ない会話の中でルールに触れる機会を作ります。ルールを「確認する」というスタンスで話すと、お子さんも身構えずに済みます。
- 新しいアプリを使い始める前に確認する: お子さんが「新しいSNSアプリを使ってみたい」と言ってきたときなどに、「新しいことを始める前に、もう一度うちのルールを確認してみようか」と促し、特に知らない人との交流や個人情報の公開に関する部分などを一緒に読み合わせます。
これらの時間は、ルールを「守らせる」ための時間というより、「家族みんなで安全にインターネットを使うために、自分たちで決めたことを確認し合う」という、コミュニケーションの時間と捉えることが大切です。
ステップ4:家族専用の連絡手段などを活用する(無理なくできる範囲で)
もし、ご家庭でLINEのグループ機能を使っているなど、家族間の連絡手段があるようでしたら、それを活用するのも一つの方法です。
- 家族LINEのノート機能に書き留める: LINEのグループトークにあるノート機能に、ルールをテキストで貼り付けておくと、スマートフォンからいつでも確認できるようになります。
- 家族共有カレンダーに「ルール確認」の予定を入れる: スマートフォンのカレンダーアプリで家族と共有できる機能がある場合、月に一度「SNSルール確認日」といった予定を入れておくのも、確認を忘れないための良い方法です。
ただし、これらの方法はIT操作に慣れていないと難しく感じるかもしれません。無理に使う必要はありません。まずは紙に書いて貼るという、最もシンプルで確実な方法から始めてみてください。できる範囲で、ご家庭に合った方法を取り入れることが重要です。
共有する上での大切なポイント
ルールを共有し、意識できるようにするための工夫は、単にルールを貼り出すことだけではありません。その過程で、いくつか心に留めておきたい大切なポイントがあります。
- 一方的な「お触れ書き」にしない: ルールは保護者だけが一方的に決めて貼り出すものではなく、お子さんと一緒に話し合って決めた「家族みんなの約束事」であることを常に意識します。共有する際も、「自分たちで決めたルールを確認しようね」という声かけを大切にします。
- お子さんの「自分ごと」意識を高める: ルールを書く、絵を描く、貼る場所を決めるなど、ルールを「見える化」したり共有したりするプロセスに、お子さんにも参加してもらいましょう。自分で手や頭を動かすことで、「自分たちのルールだ」という意識がより強まります。
- ルールを守れたらポジティブな声かけをする: ルールを意識して行動できたときには、「ルール通りに使えて偉いね」「自分で考えて使えてすごいね」のように、具体的に褒める言葉をかけましょう。禁止や制限だけでなく、ルールを守ることの良さを実感できるようにします。
- ルールは「育てていく」ものと考える: 一度決めたルールが、お子さんの成長やSNSの新しいサービスによって合わなくなることもあります。ルールは完璧なものでなくて良いですし、見直しが必要になったらいつでも話し合って変えられることを、家族みんなで理解しておきましょう。
まとめ:できることから始めて、家族で安心を育む
ご家庭でSNS利用ルールを作成し、それを家族みんなで共有し、日常で意識することは、お子さんが安全にインターネットの世界と付き合っていくための大切な土台となります。
難しく考えすぎず、まずは「決めたルールを紙に書いて、家族みんなが見る場所に貼る」という簡単な一歩から始めてみましょう。そして、時々みんなで一緒にルールを見返す時間を作ってみてください。
このような小さな工夫が、ルールを単なる「きまり」ではなく、ご家庭の安心につながる「家族のあいだの支え合い」へと育てていくことにつながります。
お子さんの成長と共に、SNSの利用の仕方も変わっていくでしょう。ルールもまた、ご家庭の変化に合わせて柔軟に見直していくことができます。大切なのは、家族みんなで話し合い、考え、支え合いながら、安心できるSNS利用のあり方を見つけていくプロセスそのものです。
ぜひ、ご家庭に合ったやり方で、ルールを共有する工夫を取り入れてみてください。